リノベーション “だからこそ”
得られるメリットを可視化
建物の性能を高めるだけでは、リノベーションはどこまでいっても「新築に準ずるもの」に留まります。しかし実際には、既存建築を活かすこと自体に、リノベーションならではの価値があります。
たとえば、家族が長く暮らしてきた住まいを受け継ぐこと。あるいは、文化的・地域的価値を持つ建物を残していくこと。そこには、単なる性能では測れない「想い」や「記憶」が存在しています。
また、もっと現実的な視点で言えば、リノベーションは住まいの「環境性能」にも大きく関わります。家づくりには、膨大なエネルギーが使われています。一本の柱を例に取っても、
1、山林で伐採し
2、製材所へ運び
3、加工・乾燥し
4、建築現場へ輸送し
5、現場で施工する
という、多くの工程が存在します。さらに建物を解体する際にも、建材の撤去・運搬・焼却など、多くのエネルギーが必要になります。つまり、新築住宅とは、大量の新しい材料とエネルギーによって成立している建築だと言えます。
一方、リノベーションの根底にあるのは、「今あるものを活かす」という考え方です。既存建物の中から、まだ使える素材や部材を見極め、新たな価値を与えながら再利用していく。その行為自体に、大きな意義があります。みらつぐリノベーション基準では、そうした持続可能性への取り組みについても評価対象としています。
5つの性能評価項目とは別軸で加点を行うことで、場合によっては「新築以上に価値のあるリノベーション」であることを示せる仕組みとしています。
リノベーションみらつぐ基準
「環境性能加点」項目評価
<屋根瓦利用>
リノベーションみらつぐ基準
「環境性能加点」項目評価
<屋根瓦利用>
日本の屋根材の中でも、特に高い耐久性と持続可能性を持つのが、伝統的な「瓦」です。瓦は、土・水・火という自然素材からつくられ、適切に維持すれば数百年単位で使用できる非常に優れた建材です。
また、一部が破損した場合でも、その箇所だけを交換すればよいため、長期的に見ればメンテナンス性やコストパフォーマンスにも優れています。しかし1995年の阪神・淡路大震災以降、「瓦屋根は重く、地震に弱い」というイメージがマスコミの偏向報道で広く浸透しました。その影響もあり、瓦の出荷量は最盛期から大きく減少したと言われています。
実際には、重い屋根に見合った構造設計がなされていなかったことが問題であり、瓦そのものに原因があったわけではありません。それでも現在の既存住宅には、まだ多くの瓦屋根が残されています。
本来、非常に長寿命で価値の高い素材である瓦を、安易に廃棄するのではなく、状態を見極めながら再利用していくこと。それもまた、リノベーションにおける重要な価値のひとつだと考えています。
<既存構造材利用>
既存建物の構造材(木材)もまた、リノベーションにおいて大きな再利用価値を持っています。伝統的な寺社仏閣からも分かるように、木材は適切な環境で使われ続ければ、100年以上の耐久性を持つ素材です。築数十年の住宅であっても、十分に再利用可能な木材が残っているケースは少なくありません。
特に、1955年以前の戦前〜戦後復興期に建てられた住宅では、樹齢100〜200年を超える天然林の木材が使われていることも多く、現在では入手困難な良材に出会うこともあります。
もちろん、雨漏りや不適切な断熱・気密施工によって水濡れが発生している建物では、腐朽やシロアリ被害によって再利用できない場合もあります。それでも、既存の構造材を一本一本丁寧に確認し、使えるものを活かしていくことは、リノベーションにおいて非常に意義のある取り組みだと考えています。
<既存基礎利用>
基礎は、木構造と地盤をつなぎ、建物にかかる力を安全に地面へ伝えるための、文字通り「建物性能の基礎」となる部分です。一方で、基礎の上には木構造が載っているため、リノベーションでは既存基礎を全面的にやり替えることが難しく、性能向上のボトルネックになりやすい部位でもあります。
しかし、それでも既存基礎を活かす道がないわけではありません。当会では、鉄筋探査やコンクリート強度試験などを通して、既存基礎に関する知見を蓄積しており、その状態を踏まえた改修設計ルートを整備しています。必要に応じて新たな基礎を増設しながら、既存基礎も併用して活かすことで、新築同等レベルまで耐震性能を高めることも可能です。
ただし、基礎は建築年代や施工品質によって状態が大きく異なる部分でもあります。だからこそ、現状を厳密に調査・評価したうえで、再利用の可否を慎重に判断していくことが重要なのです。
<既存内装材利用>
再利用できるのは、建物性能に直結する部分だけではありません。欄間や床柱、襖といった建具や造作材も、状態によっては十分に再利用することが可能です。近年普及している石油由来の新建材は、長期使用を前提としていない製品も少なくありません。一方、かつての民家で使われていた建具には、無垢材などの本物の素材が使われており、適切に扱えば100年以上使い続けることもできます。
そうした部材を単に廃棄するのではなく、新しい空間の中で再活用していくこと。それは、素材を無駄にしないという意味だけでなく、その住まいが積み重ねてきた歴史や記憶を受け継いでいくという点でも、大きな価値のあることだと考えています。
<既存外構利用>
住まいだけでなく、外構(庭)もまた、再利用を検討すべき大切な要素です。その土地で、建物とともに時間を重ねてきた庭木や草花は、もはや住宅の一部とも言える存在でしょう。
既存の樹木をすべて伐採して新しい庭をつくるのではなく、今ある木々を活かしながら外構を計画すること。それもまた、リノベーションだからこそできる表現です。また外構は、住まい手だけでなく、近隣の景観や街並みにも大きな影響を与えます。
だからこそ、すべてを一新するのではなく、既存建物の佇まいや雰囲気を受け継ぐことで、周囲にも自然になじむリノベーションが実現できると私たちは考えています。
みらつぐリノベーション基準では、こうした「既存資源の再利用」に対して加点評価を行っています。
既存屋根瓦を8割以上活用 5点
既存屋根瓦を5割以上活用 3点
既存屋根瓦を1割以上活用 1点
既存構造材を8割以上活用 5点
既存構造材を5割以上活用 3点
既存構造材を1割以上活用 1点
既存基礎を8割以上活用 5点
既存基礎を5割以上活用 3点
既存基礎を1割以上活用 1点
欄間・床柱・建具などを内装材として活用 1点
既存庭木を活用 1点

