快適性、省エネ、
建物寿命などに
影響のある「断熱」
耐震性能に次いで、重要視すべきなのが「断熱性能」です。当会の基準においても、配点は耐震に次ぐ大きな割合を占めています。それは、断熱性能もまた、住まい手の生命や健康に直結する要素だからです。
たとえば冬場、浴室での心肺停止事故が多く発生しています。これは「ヒートショック」と呼ばれ、建物の断熱性能の低さが大きな原因のひとつとされています。
暖かい居室から寒い廊下へ移動し、脱衣室で服を脱いでさらに体温が下がる。その状態で熱い湯船に入ることで、急激な温度差によって心臓や脳の血管に大きな負荷がかかってしまうのです。
冬ほど顕著ではありませんが、夏場の室内熱中症も軽視できません。年々厳しさを増す暑さは、住環境によっては生命に関わるレベルになりつつあります。
家のどこにいても室温差が少ない状態は、「温度のバリアフリー」とも呼ばれます。それを実現するためには、建物の断熱性能を高め、外の暑さ・寒さを室内に伝えないこと。そして、冷暖房によって整えた室温を外へ逃がさないことが重要です。
熱が逃げにくい家は、少ないエネルギーで快適な室温を保つことができます。つまり、省エネルギーにつながり、毎月の光熱費を抑えられるということ。さらにそれは、社会全体のエネルギー問題や気候変動への対策にもつながっていきます。
また、断熱性能の向上は、建物内部の結露抑制にも大きく関わります。結露は、木構造の腐朽やシロアリ被害を引き起こす原因となる、建物にとっての大敵です。住まいを長く健全に保つためには、できる限り避けなければなりません。
このように断熱性能の向上は、快適性・健康・省エネ・耐久性と、ひとつの改善で多くの恩恵をもたらしてくれます。だからこそ、リノベーションを行う際には、ぜひ真剣に検討していただきたい性能のひとつなのです。
日本の住宅における断熱性能
1980年代のオイルショック時代から現在まで、日本の断熱性能は約40年かけて「最低限の安全基準」から「世界水準の快適・省エネ住宅」へと進化してきました。現在、日本の断熱性能は、現在「断熱等級」という表示制度で評価されています。まずは、その歴史と各等級の位置付けについて理解しておきましょう。
そもそも断熱等級とは
正式名称は「断熱性能等級」。2000年にスタートした「住宅性能表示制度」によって定められた、住宅の断熱性能を客観的に評価するための指標です。
壁・床・屋根・窓など、建物の外周部における「外皮性能(=断熱性能)」を数値化し、その性能レベルに応じて等級1〜7までの7段階で評価されます。なお、断熱性能は一般的に「Ua値(外皮平均熱貫流率)」という数値で表されます。
2022年には「断熱等級4」が建築物省エネ法における最低基準として義務化されたため、現在は実質的に等級4〜7の4段階が主流となっています。歴史を振り返ると、1980年以前のほぼ無断熱の住宅が「等級1」相当。そこから1992年の「新省エネ基準」で等級2、1999年の「次世代省エネ基準」で等級3・4レベルが整備され、日本の住宅断熱性能は少しずつ引き上げられてきました。
しかし実際には、2022年に等級4が義務化されるまで、断熱性能に“最低基準”は存在していませんでした。つまり、断熱材がほとんど入っていない「等級1相当」の住宅であっても、法律上は問題なかったのです。
先述したように、断熱性能は、住まい手の健康や命に関わるだけでなく、エネルギー問題や気候変動にも直結する重要なテーマです。それにも関わらず、長年にわたって規制が存在しなかったことは、日本が「断熱後進国」と呼ばれる一因にもなっています。
さらに言えば、現在最低基準となっている「等級4」ですら、快適性や省エネルギー性能の観点から見ると、決して十分とは言えません。当会では、新築基準の最低ラインを「断熱等級6」としています。つまり、日本の住宅断熱基準は、まだまだ発展途上にあると考えています。
断熱等級7|次元が違う (2022年 新設)
断熱等級6|快適と省エネの両立 (2022年 新設)
断熱等級5|現代の最低ライン (2022年 新設)
断熱等級4|普通(でも寒い) (1999年 次世代省エネ基準/2022年 義務化)
断熱等級3|我慢の家 (1999年 次世代省エネ基準)
断熱等級2|昭和の家 (1992年 新省エネ基準)
断熱等級1|ほぼ外 (1980年 旧省エネ基準)
リノベーションみらつぐ基準
「断熱」項目評価
当会のリノベーション基準においても、「断熱等級」を断熱性能評価の指標として採用しています。ただしリノベーションでは、耐震性能の向上や間取りの制約など、断熱性能以外を優先せざるを得ないケースも少なくありません。そうした現実も踏まえ、現在では既存不適格となる「断熱等級3以下」についても、評価対象として採点を行っています。
なお、断熱性能は全国一律ではなく、地域ごとの気候条件によって基準となるUa値(外皮平均熱貫流率)が異なります。
以下の基準は、比較的温暖なエリアである「6地域(静岡県を含む地域区分)」を基準としてスコア化しています。また、断熱等級6と7の間には、他等級よりも大きな性能差があるため、当会ではその中間水準として「断熱等級6.5」を独自に設定しています。
断熱等級7(Ua値 0.26以下) 35点
断熱等級6.5(Ua値 0.36以下) 30点
断熱等級6(Ua値 0.46以下) 25点
断熱等級5(Ua値 0.60以下) 20点
断熱等級4(Ua値 0.87以下) 12点
断熱等級3(Ua値 1.0以下) 4点
断熱等級2以下(Ua値 1.0超) 0点
断熱性能は、「暖かい家」や「涼しい家」をつくるためだけのものではありません。健康・快適性・省エネルギー・建物の耐久性まで含め、住まい全体の質を大きく左右する、非常に重要な性能だと考えています。

