家づくりにおいて、快適さと安全性を確保することは最低限のこと。しかしその中で、見過ごされがちな要素が「結露対策」です。
冬に窓ガラスがびしょびしょになっていたり、夏のコップの周囲に水滴が発生したり。結露のことを、そんなふうに捉えている方も多いかと思います。
ですが、結露は人の健康や住宅寿命に多大な悪影響を及ぼす可能性があることを知っていますか?
結露が引き起こす健康と建物への悪影響
結露は、空気中の水蒸気が窓ガラスなどの冷たい面に触れることで露点に達して水滴となる現象です。
特に冬季、断熱が不十分な住宅では窓や壁、天井で結露が発生しやすくなります。それらの水滴を放置するとカビやダニが繁殖してしまい、アレルギーや喘息などの原因ともなりえます。また、カビによる室内の空気質の悪化は、慢性的な呼吸器疾患のリスクを高める可能性もあります。
また、結露は建物の耐久性をも低下させてしまいます。結露により木材や断熱材が濡れると、腐朽や劣化が進行します。また、鉄骨の建物でも錆が発生し、構造的な弱点を作り出します。このような問題は、長期的に見れば大きな修繕コストを引き起こす原因となります。

「高性能住宅」の結露リスク
近年、日本の住宅は断熱性や気密性が飛躍的に改善しています。これにより、冷暖房効率が高まり、エネルギー消費量が削減されたり、快適な室内を作り出しやすくなるなどのメリットが生まれました。
しかし、それと同時に結露リスクが高まってしまうという新たな問題は、まだあまり知られていません。
従来の日本の住宅は気密性が低かったため、室内各所の隙間から自然に空気の入れ替えができていました。住まい手の呼気や調理時の水蒸気などの湿気も、自然に排出されていたわけですね。
しかし、現代の気密性が高い建物は、隙間が少ないがゆえに湿気を含んだ空気を外に逃すことができず、高湿度で結露が起きやすい室内環境を作ってしまう可能性があるのです。
適切な空調・換気計画ができていればそれらの湿気もきちんと外部に排出することができるのですが、残念ながらそれを実際に実現できている住宅会社はごくわずか。
結果的に、日本では結露リスクを孕んだ住宅がいまだに多数建てられ続けています。
「夏の結露」に要注意
これまで、住宅の結露と言えば「冬」を指していることがほとんどでした。
あなたもそのような印象がありませんか?
しかし、家づくりを学んでいる先進的な地域工務店の多くは冬だけでなく「夏」の結露対策にも腐心しています。
近年の気候変動によって、日本の温湿度にも大きな変化が起きています。
私たちが住まう東海地域においても、亜熱帯気候のような局所的な大雨や、ジメジメとした高温・高湿な空気環境が当たり前となってきました。
これは物理の話になりますが、気温が高ければ高いほど、空気中で保持できる水蒸気量も増えます。
そして、空気が含む水蒸気量が多いほど、露点は上がります。
つまり、空気を少し冷やしただけでも結露が発生してしまうということです。
真夏に室内を涼しくしようと冷房をかけたら、壁の中が結露でびしょびしょになってしまった…なんていう事故も、実際に起きるようになっています。

重視されない結露計算
最初に述べたように、結露は建物を短命にしてしまう大きな原因の一つ。
四季を通じて結露を防ぐことは、これからの家づくりには必要不可欠な要素です。
実際に結露を防ぐためには、
- 断熱性能を高め、外気温の伝導を減らす
- 気密性能を高め湿気の流出入を減らす
- 適切な換気計画で湿気を排出する
- 建材の防湿性を把握し適切な壁構成にする
- その壁構成で結露が起きないか結露計算を行う
これらをすべて実施することが最低条件です。
特に、水蒸気の移動をコントロールするための壁構成と、その壁構成で本当に結露が起きないかを計算することは結露対策の最たるものです。
- 室内の温湿度
- 外気の温湿度
- 建物の外皮(壁や天井など)構成
これらの情報を入力して、壁内で結露しないか判定するのが結露計算というものですが、日本の家づくりにおいて、結露計算は十分な規定がありません。
国土交通省が令和4年に住宅性能評価機関に通知した内容として
- 室内の温度15°C、相対湿度60%
- その地域の最寒月の平均気温、相対湿度70%
蒸気の条件で結露判定を行うよう指示がありました。しかし、これはあまり意味がありません。

なぜなら、最も寒い月に、室内の温度15°Cで暮らしたい人はいないからです。
あなたも考えてみていただきたいのですが、真冬の室温は20°Cくらいは欲しいはず。
そして、室温が高まれば結露しやすくなります。15°Cでは結露しなくとも20°Cだと結露する、そんなことも実際に起こりうるはずなのです。
また、上記の通知はあくまで冬の結露計算。夏に関しては、まだ一切の指示がありません。
つまり、国の規定はまったく実を伴わない無意味なもの。
住宅事業者それぞれが、独自の基準で結露計算を行う以外、住まいと住まい手を守ることはできないのです。
住まいの大敵、結露。未来へつなぐ工務店の会では、結露対策の重要性を他地域に先駆けて唱え、最新の気候に即した厳しい条件での結露計算を行い、安心を提供しています。